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東京高等裁判所 昭和38年(ラ)449号 決定 1963年11月09日

相手方 城南信用金庫

理由

ところで抗告人は、競売申立人たる相手方が昭和三十七年二月二十日抗告人に対し、本件競売申立債権と抗告人の相手方に対する預金及びその利息債権とを対当額で相殺する旨の意思表示をしたので、相手方の抗告人に対する債権は三百十五万千三百五十七円に減じた旨主張し、右事実は相手方において認めるところである。従つて前記最後の競売期日たる昭和三十八年七月二十九日には相手方の本件競売申立債権は右三百十五万千三百五十七円残存するに過ぎなかつたものである。

しかして右最後の競売期日における本件競売物件の最低競売価額は一括して千六十二万四千円であり、その内(一)の土地の評価額は三百四万円であることは前記のとおりであるから(二)乃至(四)の物件の合計価額は七百五十八万四千円を下らぬものというべきである。

しかして競売法による競売においても民事訴訟法第六七五条の準用があり、裁判所により競売に付せられた数個の不動産中ある不動産のみの売得金を以て競売申立人の債権及びその先順位の抵当権者の債権並に競売費用を償うに足るときは、たとい競売申立人の後順位の抵当権者がある場合でも、右後順位の抵当権者が自ら競売の申立をしていない限り他の不動産を競売に付することを許されないものと解すべきである。しかるに前記のとおり債権者にして競売申立人たる相手方は順位第一番の抵当権者で本件不動産を競売する際その被担保債権は三百十五万千三百五十七万円に過ぎず(二)乃至(四)の物件を一括売却すればもとより、その中の一棟の建物のみを競売に付しても場合によつては相手方の債権と競売費用を弁済するに足るものと推測されるから少くとも(一)の物件を加えて全物件を競売する必要なくこの点において本件競売手続に違法がある。そして(一)乃至(四)の物件は一括して競売に付せられたのであるから右違法のある以上全物件の競落は許されないものといわざるを得ない。(なお原裁判所は必要な限度に於いて競売の目的物を特定して改めて手続を進行すべきである)。

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